方針・基本的な考え方

当社グループは、人材こそが価値創造の原動力であり、最も重要な財産であると考え、人材開発を重要な経営課題と位置づけています。その基盤には、「愛」「敬」の精神と「経営理念 Mission」があり、「価値観 IK Values」を共有し、「目指す姿 Vision」を実現できる人材の育成を目指しています。
多様な業務経験と成長機会の提供、役割に応じた研修を通じて、専門性とグローバルな視野を備え、国内外で組織・事業を牽引し、変化に柔軟に対応できる人材を育成します。世界中で事業を展開する当社にとって、国境を越えて国際社会と共生し、新しい価値を創造できる「グローバル人材」の育成は重要な課題です。
また、社員一人ひとりが自らのキャリアを主体的に描き、成長を実感できる環境づくりにも取り組んでいます。
マテリアリティにおいても「価値創造を担う人的資本の育成・強化」を掲げ、持続的な成長を支える人材戦略を推進しています。

目標

「サステナビリティ中期計画2026」の中で、戦略およびKPI・目標を定めました。

戦略 KPI・目標(2024年4月~2027年3月) バウンダリー
人的資本投資への注力 ① 従業員一人当たりの教育研修費用を、毎年、前年度実績を上回る
② 海外駐在経験率40%程度を維持
単体
  • *教育研修費用は、稲畑産業単体で実施する集合研修や外部研修、動画研修等にかかる費用。
    実績については、サステナビリティデータをご参照ください。

2024年度の実績は以下の通りです。

KPI 2024年度実績 進捗状況
①従業員一人当たりの教育研修費用 82,763円
(2023年度は67,496円)
②海外駐在経験率 38.6%

企業理念の浸透

当社グループの人材育成の土台は、創業時から受け継がれる「愛」「敬」の精神の共有です。国内外すべての社員に「社是」「経営理念 Mission」「目指す姿 Vision」「価値観 IK Values」を浸透させるため、企業理念カードの配布やワークショップ実施等の取り組みを行っています。

また、近年のキャリア採用者の増加や、M&Aによるグループ傘下の子会社の増加を背景に、2025年度からグループ全体を対象とした経営理念浸透研修を開始します。

人事制度・評価制度

当社の人事制度は、職掌をプロフェッショナル・スタッフ・アシスタント職に区分し、役割・責任・ミッションを明確にしています。また、1~8のバンドと呼ぶ資格区分を設け、キーになるバンド層に対し、研修を重点的に実施しています。

*1~8のバンド区分は、プロフェッショナル・スタッフ職に適用される区分です。

プロフェッショナル・スタッフ職は、常に能力の向上と高い成果の達成を目指し、能力評価の他、目標設定とその達成度合・プロセスを判断して成果評価を行っていきます。アシスタント職は担当業務の習熟と顧客サービスの向上を目指しますが、評価はより簡素な仕組みとし、能力・成果を総合的に判断して評価します。
社員は年度初めにアクションプログラム(AP)と呼ばれる目標管理制度に沿って、年間目標を設定します。(すべてのプロフェッショナル・スタッフ職および一部のアシスタント職)当社のAPは、評価者と被評価者間での業績向上に向けたコミュニケーションツールという位置付けで、より自由な発想で挑戦的な目標を掲げる被評価者と、それを応援しサポートする評価者との間で有効なツールとして活用してもらうことが目的です。目標の内容およびレベルについては、各所属組織の目標に合致するとともに、自分のバンドの期待役割に相応しいものを設定します。組織目標の達成と自己の成長につながる目標を、自由な発想でより挑戦的に設定することを重要視しています。
半期が経過した時点で中間レビュー(面談)を行い、必要に応じて修正を行います。
年度が終了すると、AP目標と照らし合わせた評価と、1年間の行動およびそれ以外の業務や役割等を反映した能力評価とで総合評価を行います。総合評価は全本部長・室長による協議を行い決定しています。評価が最終確定した後、評価者と非評価者との間でフィードバック面談が実施されます。その際、被評価者に対し、評価シートが提示され、その評価に至った理由を本人に説明しています。フィードバック面談は、被評価者に対して評価をより有益なものにするとともに、評価の公平性・透明性を担保する重要なプロセスと考えています。

研修体系

2023年、社員一人ひとりのキャリア自律と主体的な成長を支援するため、研修体系を刷新しました。バンド別研修の拡充と手挙げ式への転換、選択式研修の導入を行いました。
研修内容は年々拡充しており、サステナビリティ中期計画2026で掲げた目標に沿って、一人当たりの教育研修費用も増加しています。人的資本への投資を強化するなかで、特に管理職研修に注力しており、リーダーシップの向上を通じて、組織全体への好影響の波及を目指しています。

  • P職は基幹的業務・管理職、S/C職は基幹的業務・非管理職(C職は転居を伴う異動なし)、A職は主にサポート業務を行う職掌

研修注力テーマ

注力テーマ 目的
管理職リーダーシップ養成強化 現場を動かすマネジメント力の強化
ダイバーシティ&インクルージョン理解促進 多様性を受け入れて、個が能力を発揮できる風土の醸成
実務研修の充実 実務に直結する学びを通じた、仕事の質とスピードの向上
手挙げ式の選択型プログラムの拡充 社員の多様な成長ニーズに応える柔軟な学習機会の提供
経営理念浸透プロジェクトの開始 経営理念のなかの価値観IK Valuesについて理解を深め、実践につなげる
IK道場(組織開発ほか)の開始 社内講師による学びを通じた組織力の向上
学習管理システムの導入 社員の学びを見える化し、個々の成長を後押しする仕組みの整備

タレントマネジメントシステムの導入

企業の持続的成長には、社員一人ひとりの能力や志向を把握し、最適な配置と育成を行うことが重要です。こうした考えのもと、当社では2024年度より、人的資本の可視化とキャリア開発支援のためのタレントマネジメントシステムを導入しました。
これまで人事システム上に蓄積されていた人事データを整理・可視化し、戦略的な人材配置に活用しています。また、社員自身がプロフィールや業務経験、キャリア志向を入力することで、自らのキャリアを主体的に見つめ直す機会を提供し、キャリア開発の支援につなげています。
今後はこの仕組みを活用し、社員一人ひとりの望ましいキャリア形成と全社的な人材活用の最適化を目指していきます。

海外拠点向け研修

当社グループでは、長期ビジョン「IK Vision 2030」で海外比率を高めることを掲げており、海外事業が急速に進展しているなかで、海外拠点に向けた教育研修の重要性を認識しています。
海外子会社のスタッフに対して、仕入・在庫管理、与信管理、業務管理、法務知識などの基本的な事項に関する研修を実施しています。
e-learningなども活用し、継続的に実施することで、グループ全体のレベルアップを図っています。

海外駐在の機会拡充

サステナビリティ中期計画2026において、「人的資本への投資強化」を戦略の1つに掲げ、海外駐在経験率40%の維持を目標としています。これは、グローバルに事業を展開する商社として、成長戦略を支えるグローバル人材の育成を加速するためです。
海外駐在は語学力や異文化理解に加え、現地の商習慣や価値観を体感することで、柔軟な思考力や課題解決力を養う貴重な機会です。こうした経験を持つ人材の増加は、商社としての競争力強化と持続的成長の基盤となります。
今後も、社員のキャリア形成と企業成長の両立を図る観点から、海外駐在の機会を戦略的に設計・拡充していきます。

キャリア開発支援

社員それぞれのキャリア開発の機会を提供することで、社員のモチベーション喚起とキャリア意識の醸成、組織力の強化を目指しています。

社内公募制度

組織の強化や人材の適材適所への配置と補充、社員のキャリア支援の一環として、社内公募制度を2021年3月からスタートしました。
人材を募集したい部署が社内へ公募要件を提示し、希望する社員は自由に応募することができる制度です。

キャリアアップ申告制度

社員のキャリア支援の一環として、キャリアアップ申告制度を2022年度からスタートしました。
社員が自身のキャリアアップのために希望する仕事(部門・業務)への異動を、人事へ申告することができる制度です。

海外トレーニー制度

グローバルに活躍できる人材の幅広い育成と若手社員のキャリア形成を目的とし、主に新卒3年目のスタッフ職を対象とした短期海外研修制度を2023年度から導入しました。
海外グループ会社に1~3カ月間派遣し、海外でのビジネスや生活を経験することで、グローバル人材としての能力開発を目指しています。

新入社員ローテーション制度

若手社員の視野拡大を目的とし、新卒採用の社員全員に、営業部門と管理部門の両部門を経験させる、新入社員ローテーション制度を2022年度より導入しました。
入社時に配属された後、翌年には入社時配属とは違う部門(営業→管理、管理→営業)に配属され、また翌々年には、改めて適性をみて再配属される仕組みです。
2年間の運用状況を踏まえ、2024年度の新卒入社社員は、全員管理部門に配属となりました。1年間、管理部門の多様な機能を学び、来年は全員営業部門に配属予定です。

40~50代対象のキャリア研修

40~50代のスタッフ・プロフェッショナル職社員を対象とした、自分らしい働き方を考えるためのキャリア研修を2022年度から開始しました。
自身のキャリアやスキルの棚卸しを行い、経験や強み等の見える化を行った上で、今後必要とされるキャリアやスキルについて検討する機会を提供しています。

動画学習の支援制度

社員の自立的なキャリア開発、能力開発支援の一つとして、社員が自由に選択して自己啓発に生かせる動画学習の支援制度を2022年度より導入しました。海外駐在員の視聴も可能です。
従来からの通信教育やオンライン語学研修と合わせて、社員の自己啓発を積極的に支援していきます 。