方針・基本的な考え方

当社グループは、サステナビリティを単なるリスクマネジメントではなく、持続的成長の機会と捉え、マテリアリティに沿ったさまざまな取り組みを進めています。 人材が最大の資本である商社にとって人的資本の強化は、価値創出力の向上に直結し、競争優位性を支える重要な基盤です。環境分野では、リサイクルやバイオといった環境配慮プラスチックに注力し、脱炭素社会や循環経済への貢献に加え、合成樹脂事業における競争力強化にもつなげています。当社グループの企業価値を一層高めるべく、サステナビリティを重要な経営課題として位置づけています。 当社グループの「愛」「敬」の精神に基づく顧客・社会への共感と寄り添いの姿勢は、サステナビリティの理念と深く通じており、私たちは長期的な企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指しています。

2021年11月、当社グループが掲げている経営理念を基本する「サステナビリティ基本方針」を制定しました。また、環境・社会の課題や国際的な潮流を踏まえて、人権や環境などの9つの項目から構成される「サステナビリティ行動指針」を制定しました。

稲畑産業グループ サステナビリティ基本方針

私たち、稲畑産業グループは、『「愛」「敬」の精神に基づき、⼈を尊重し、社会の発展に貢献する』という経営理念に則り、地球環境や社会を取り巻く様々な課題に対して、経営の重要事項として取り組んでいきます。
当社グループのあらゆる事業活動において、時代とともに変化する社会のニーズに応え続けていくことで長期的な企業価値向上を目指すとともに、持続可能な社会の実現に貢献します。

稲畑産業グループ サステナビリティ行動指針

1. ⼈権の尊重

人権に関する国際規範を支持・尊重し、事業活動において人種・国籍・民族・宗教・信条・性別・年齢・心身障害・社会的身分・性的指向における差別、ハラスメントなど一切の⼈権侵害⾏為を容認しません。強制労働、児童労働、奴隷行為などの非人道的な行為も容認しません。
人権デュー・ディリジェンスを通じて、事業活動における人権侵害および侵害への加担を回避します。

2. 従業員の健康および安全・安心な労働環境への配慮

従業員一人ひとりが健康で、安全に、安⼼して働き続けられる職場環境の整備に努めます。健康と安全に関わる悪影響については、それらの削減に努めます。
事業を行う各国の労働に関する法令遵守を徹底するとともに、労働者の権利を尊重します。

3. 多様な人材が自由闊達に切磋琢磨する風土の醸成

従業員一人ひとりの関心や能力に応じた強みを育むために、能⼒開発の機会を継続的に提供します。また、多様な人材がお互いの個性や能力を尊重し、一体感を持って働けるよう、対話を促進する職場環境の整備に努め、自由闊達な社内風土の醸成を目指します。

4. 地球環境の保全

気候変動をはじめとした地球環境問題に真摯に向き合い、その解決に向けて地球環境の保全に努めます。あらゆる事業活動において地球環境への影響を想定し、GHG排出量削減をはじめとする気候変動の緩和・適応、エネルギー管理、資源有効利用・廃棄物削減、汚染防止、化学物質管理、水資源の保全、生物多様性の保全などの活動に取り組みます。
活動にあたっては、環境マネジメントシステムを運用し、環境関連の諸法令・規制の遵守、事業活動に伴う環境への影響の適切な把握・管理に努めます。
また、顧客や社会の環境負荷を低減する課題解決型の商材販売など、事業を通じて環境保全に貢献します。

5. 災害などの不測の事態に対する危機管理

地震や⾵⽔害などの⾃然災害だけでなく、感染症やテロ、事故、サイバーアタックやセキュリティインシデントなど不測の事態が発生した際には、⼈命尊重を第⼀に、事業を中断しない、あるいはできるだけ早期に事業復旧させることにより、顧客・サプライヤーなどへの影響を最⼩限に留め、信⽤を維持するよう努めます。そのために、BCP(事業継続計画)を定期的に見直し、常に最新の状態に整備します。
災害時には事業所の地域社会と協力して復旧・復興に臨みます。

6. 持続可能なサプライチェーンの構築

気候変動などの地球環境に関する課題や、人権問題など社会課題の解決に向けて、サプライチェーンに関わるすべてのステークホルダーと協働して、持続可能なサプライチェーンを構築します。そのため、サプライヤーをはじめとするステークホルダーと「稲畑産業グループ 持続可能なサプライチェーン方針」を共有し、当指針をもとにコミュニケーションを深め、サプライヤーとの連携強化に努めます。
取引の際には、常に公正・公平を心がけ、優越的地位の乱用は行いません。独占禁⽌法を含む各国・各地域の公正な競争および取引に関する法令を遵守し、フェアな事業活動を⾏います。

7. コンプライアンスの徹底

事業活動に関わる各種の法令遵守にとどまらず、贈収賄など腐敗行為の防⽌、利益相反防⽌、情報の適切な管理などを徹底し、公正で誠実な事業活動に努めます。すべての役職員は「稲畑産業コンプライアンス宣言」に基づき、高い倫理観をもって行動します。
コンプライアンス違反に関する報告の受理、適切な対応のために構築した、機密性・匿名性を担保した内部通報制度を適正に運用します。
これら活動は、定期的な内部監査や監査等委員会による監査の充実を通じて、グループ全体のリスク管理・コンプライアンス体制を強化し続けます。

8. 外部ステークホルダーとの協働

顧客・サプライヤー、株主・投資家、業界団体、地域社会などのステークホルダーと、様々な機会を通して継続的に対話し、課題の把握や方針・方向性の共有などに努めます。
対話を通じて得た情報は、効率的な業務運営や企業価値向上、環境・社会課題の解決に資する施策立案などに活かします。施策を実行する際は、ステークホルダーと適宜協働して、実効性を高めるよう努めます。
事業を行う地域社会に対しては、良き企業市民として地域の発展に貢献する取り組みを推進します。

9. サステナビリティ関連の情報開⽰

多様なステークホルダーに信頼され、期待される企業であるために、サステナビリティに関する情報の適時・適切な開⽰を行い、透明性の確保と説明責任を果たします。
また、TCFD提言に沿った情報開示に取り組むなど、サステナビリティに関する国際的なイニシアティブの動向の把握や活動への参画を通じて、ステークホルダーや社会の要請に応えます。

サステナビリティ委員会
2021年11月制定
2022年6月改訂
2024年12月改訂

稲畑産業グループ サステナビリティ行動指針

ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ課題について全社的に取り組みをより推進するため、2021年10月に代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しました。
同委員会は、副委員長をサステナビリティ担当の代表取締役専務執行役員が務めるとともに、4つのセグメントをそれぞれ担当する取締役1名および執行役員2名と主な管理部門長6名が委員を務めています。また、オブザーバーとして社外取締役7名、非業務執行取締役2名も同委員会に参加し、必要な意見を述べています。全取締役が同委員会に参加することで、同委員会を通して、取締役会 としての監督機能を果たしています。

同委員会は最低年1回開催(必要に応じて臨時開催)することを原則とし、当社グループのサステナビリティに関する方針および施策の策定・承認・モニタリングを実施しています。

取締役会においては、取締役会規程にてサステナビリティを巡る諸課題(気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など)への取り組み状況を、最低年1回、担当取締役から取締役会へ報告することが定められています。加えて、四半期ごとに業務執行報告書を通じて、サステナビリティに関する取り組み状況を取締役会に報告しており、同委員会で審議・承認した内容やそれに沿った取り組み状況などについても上記プロセスの中で報告が行われ、取締役会の監督を受けています。

また、当社ではサステナビリティへの対応は当社の重要な経営課題と認識していることから、取締役の業績連動報酬※1の指標として「複数の外部評価機関(FTSE Russell 及び MSCI)による ESG スコア」を設定、また株式給付信託(BBT)※2の業績係数の算定指標として「グループエンゲージメントサーベイ達成率」を設定して、取締役会のサステナビリティ課題への実効性を高めております。

同委員会で決議された事項は、専任組織であるサステナビリティ推進部と主な管理部門員からなるサステナビリティ委員会事務局とが連携しながら実行・運営し、グループ全体のサステナビリティ活動を推進しています。 また、サステナビリティ推進部では同委員会の有効な議論のために、各営業本部員及び主な管理部門員をメンバーとするサステナビリティ推進委員とともに、全社のサステナビリティに関連する情報を取りまとめ、提供しています。


  • ※1 役職別固定報酬をベースに税金等調整前当期純利益(投資有価証券売却益を除く。)、資本収益性(ROIC と ROE)、株価及び複数の外部評価機関(FTSE Russell 及び MSCI)による ESG スコアの各水準に応じた係数を掛けて業績連動報酬を計算しております。
  • ※2 役職ごとに定めた基準ポイントの半分を勤続ポイント(固定ポイント)とし、業績ポイント(勤続ポイント×業績係数)を加算して、当年度の付与ポイントとします。 業績係数は連結営業利益目標達成率とグループエンゲージメントサーベイ達成率により決定されます。 連結営業利益目標達成率とは対外的に公表した中期経営計画に対する実績のことをいい、グループエンゲージメントサーベイ達成率とはサステナビリティ中期計画における従業員エンゲージメントサーベイ KPI平均値に対する達成率のことをいいます。

サステナビリティ推進体制図

サステナビリティ委員会で議論され、取締役会に報告された主なサステナビリティ関連事項
2021年度 サステナビリティ基本方針および行動指針の制定
人権方針の制定
2022年度 国連グローバル・コンパクトの参加
2050年カーボンニュートラル宣言
マテリアリティの特定
TCFD提言に沿った情報開示
外部ESG評価状況(FTSE・MSCI等)
GHG排出量算定(スコープ1,2,3)
TCFD(シナリオ分析)進捗
人権デュー・ディリジェンス進捗
2023年度 TCFD提言に沿った情報開示
GHG排出量算定(スコープ1,2,3)
TCFDおよびTCFDコンソーシアムへの賛同
人権デュー・ディリジェンス進捗
2024年度 サステナビリティ中期計画2026策定
カーボンニュートラル移行計画
外部ESG評価状況(FTSE・MSCI等)
人権方針改定および持続可能なサプライチェーン方針制定
サステナビリティ中期計画2026に対する2023年度実績
再エネ電力証書の購入計画
取締役対象の人権研修

戦略

当社グループは、社是・経営理念・目指す姿・価値観を基本に、2021年にサステナビリティ基本方針・行動指針を制定しました。これを出発点として、リスクと機会の評価・経営戦略や事業活動への影響・ステークホルダーの関心・社会的環境的な影響・中長期的な視点・業界動向などの観点から重要度評価を行い、2022年にマテリアリティ(重要課題)を特定しました。 私たちは、企業として持続的に成長すると同時に、持続可能で健全な社会の形成に貢献する責任を果たすため、リスクと機会の両面に適切に対応することが重要であると考えています。 この考えに基づき、以下の2つの視点から、計6つのマテリアリティを特定しました。 財務的な影響については、「持続的な価値創出」の3つのマテリアリティの方が短期的かつ直接的に影響を受けやすく、「事業継続の基盤」の3つのマテリアリティの方が、中・長期的かつ間接的に影響を受けやすいと考えています。 マテリアリティの特定プロセス等、詳細についてはマテリアリティ(重要課題)のページをご参照ください。


さらに2024年には、これらのマテリアリティに対応するため、ありたい姿を描いた長期的なビジョンと、それを実現するためにバックキャストで設定したKPI・目標を含むサステナビリティ中期計画2026を策定しました。この計画は、サステナビリティ委員会によるモニタリングと取締役会による監督のもと、着実に推進しています。
詳細については、サステナビリティ中期計画2026のページをご参照ください。

リスク管理

当社グループでは、従来のリスク管理手法だけでは不確実な要素を含む長期的な影響を管理するには十分ではないと考え、サステナビリティ関連のリスク・機会に関しては、サステナビリティ委員会において管理を行っています。シナリオ分析等をもとに定性・定量の両面から抽出・検討されたリスク・機会を同委員会にて識別・評価し、それらを中期計画の指標・目標に反映し、目標に対する進捗を同委員会にてモニタリングすることで、当該リスク・機会を管理し、取締役会の監督を受けています。
サステナビリティ中期計画2026において、改めて、マテリアリティごとのリスク・機会とそれらに対応する主な取り組みを整理し、指標・目標に反映しました。
詳細については、サステナビリティ中期計画2026のページ内、マテリアリティに関わるリスク・機会と主な取り組みをご参照ください。

指標・目標

サステナビリティ中期計画2026において、2030~50年度頃の長期的なビジョンを示すとともに、長期的なビジョンからバックキャストし、マテリアリティに沿った2024~26年度の3カ年のKPI・目標を設定しました。
詳細については、サステナビリティ中期計画2026のページ内、マテリアリティに関わる長期的なビジョン・戦略およびKPI・目標をご参照ください。