方針・基本的な考え方

アジアを中心とした海外19カ国約60拠点で、4つのセグメントをグローバルに展開する当社グループは、さまざまなリスクにさらされています。これらのリスクは、予測不可能な不確実性を含んでおり、将来の当社グループの業績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、リスク管理を経営の重要課題と認識し、与信管理規程、輸出管理規程、商品管理規程といったリスクに係る諸規程を整備・運用し、リスク管理室を中心にリスクマネジメントを行っています。また、国内外のグループ会社に対しては、グループ会社管理規程により、本社からリスクに対する適切な牽制機能を働かせるとともに、商社拠点・製造拠点別の業務ルールを多言語で整備・運用することで、日々の業務から発生するリスクに備えています。

リスクマネジメント体制・組織

全社に関わる多様なリスクついては、発生の未然防止およびリスク対応を図るために、個々のリスクを各担当組織が継続的に監視するとともに、関連する委員会、会議体が連携して適切なリスク対応が可能となるリスクマネジメントを推進しています。

それぞれ重要な内容については必要に応じて取締役会に報告を行っています。
取締役会は、各委員会や担当組織から報告されるその他のリスクを加味し、統合的に重要性の高い全社リスクを監督しています。

重要性の高いリスクとそれらへの対応

当社グループでは下記リスクマトリックスに表示した14のリスクを、当社グループが直面している主要なリスクとして認識しています。マトリックスでは、2023年3月期に実施した「取締役会の実効性評価」における経営者のリスク認識に対する回答などを踏まえ、各リスクにおいて想定される当社グループの経営成績等への影響や発現可能性により、マッピングしています。

当社グループの直面している主要なリスク

1. 取引先の信用リスク

当社グループの事業は、国内外の多数の取引先に対して信用を供与しています。当社グループは海外取引先も含めたグローバルな与信管理をしてはいますが、必ずしも全額の回収が行われる保証はありません。従って、取引先の不測の倒産・民事再生手続などによる貸倒損失や貸倒引当金の計上を通して、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度末時点において、当社グループの受取手形の金額は23,247百万円、売掛金は153,640百万円、棚卸資産の金額は88,890百万円で、その合計額は総資産の70%を占めています。重要性が高い与信供与については、経営者がメンバーとなる審査会議で審議しています。棚卸資産については、連結グループ各社の残高推移を月次ベースでモニタリング管理しています。
【対応組織】リスク管理室

2. 商品市場の変動リスク

当社グループが取り扱う情報電子材料、ケミカル原料、食品、合成樹脂の多くは商品相場の変動に影響を受けます。そのため市況の変動への弾力的な対応ができなかった場合、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。各営業部門で市場の情報を収集し、価格動向を注視するとともに、在庫管理を徹底しています。
当連結会計年度においては、情報電子事業における主要販売製品であるフラットパネルディスプレイ関連部材の市場価格下落の影響を受けました。また、生活産業事業における食品ビジネスでは在庫取引を行っており、米国市場において外食産業向け水産品価格下落の影響を受けました。
【対応組織】財務経営管理室、各営業本部

3. 海外活動に潜在するリスク

当社グループの海外における生産及び販売活動は、東南アジアや北東アジア、北米、欧州と多数の地域に及びます。これらの海外市場への事業進出には、予期しない法律または規制の変更、不利な政治または経済要因、人材の採用と確保の難しさ、未整備の技術インフラ、潜在的に不利な税制の影響、その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しています。
当社グループは、各国法令、環境法規制、社会情勢・取引先動向等に注視し、変化にあわせた迅速な対応を実施できるよう体制を整備し、それらリスクの低減に努めています。
当連結会計年度における地域ごとの売上高では、アジア合計が51%であり、最も影響を受ける地域です。主に中国で新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動抑制の影響を受けました。また、ロシア・ウクライナ情勢におけるリスクが顕在化しましたが、当社グループの財政状態および経営成績への直接的かつ重要な影響はありませんでした。
なお、感染症流行などの非常時の対策としては、海外の主要な拠点において事業継続計画(BCP)を策定、運用しています。
【対応組織】リスク管理室、財務経営管理室

4. 事業投資に係るリスク

当社グループは、事業展開をするにあたって合弁・ジョイントベンチャーなどに出資し、持分を取得するケースが多々あります。特に連結対象となる関係会社に対する投資については、当該グループ会社の財政状態および経営成績の動向によって、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、商社ビジネス拡大を主たる目的としたマイノリティー投資を基本としており、マジョリティー投資については、リスク・金額を限定して投資しています。
NC2023では「将来の成長に向けた投資の積極化」を重点施策として推進するとともに、M&Aを行う専門部署を設置しました。重要性の高い新規投資案件については、同部署が営業部門等と連携して定量面・定性面からリスクなどを評価・分析したうえで、経営者がメンバーとなる審査会議で審議しています。投資実行後、定期的にモニタリングし、一定の基準に満たない案件などについては、適宜、対策を講じるよう努めています。
【対応組織】リスク管理室、事業企画室

5. 為替の変動リスク

当社グループは、海外の事業展開における製品、原材料の生産と販売および貿易をしています。原則として為替予約などによるヘッジ取引を行っていますが、外貨建取引等に伴う為替レート変動の影響を受ける可能性があります。また、各地域における売上高、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
当連結会計年度における為替差損は703百万円となり、為替換算調整勘定は17,187百万円となりました。
【対応組織】財務経営管理室

6. 事業再構築に係るリスク

当社グループは、事業の選択と集中の推進のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の売却・再編による事業の再構築を継続しています。これらの施策に関連して、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。各国政府の規制や雇用問題等によって、事業再構築の計画が適時に実行できない可能性もあります。また、当社グループが事業再構築を実施することで、当初の目的の全部または一部を達成できる保証はありません。なお、撤退検討基準を設けて、該当する当社グループ会社に対しては審査会議において撤退などを審議しています。
【対応組織】リスク管理室

7. 環境に係るリスク

当社グループは、国内外において4つの事業分野で幅広い商材を取り扱っており、これら商材の製造・販売は当該地域の環境規制やエコ商材への変更などの影響を受ける可能性があります。合成樹脂事業は、脱プラスチック商材への変更の影響を受ける可能性があります。仕入先の分散化に取り組むとともに、脱炭素社会・循環型社会への貢献に向けて、各事業でリサイクル商材などの環境負荷を低減する商材の販売に注力しています。
また、気候変動リスクについては、2023年4月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同するとともに気候変動起因による自社事業活動への影響を適切に把握し、その内容を開示しています。
【対応組織】総務広報室

8. 情報システム・情報セキュリティに係るリスク

当社グループは、商社グループとして事業を展開するうえで、取引先の機密情報や個人情報および当社グループの機密情報や個人情報を有しています。これら情報の外部流出や破壊、改ざんなどがないように、「情報セキュリティ規程」を制定し、情報管理手続きを定めたマニュアルを整備して、グループ全体で管理体制を構築し、徹底した管理と情報セキュリティ強化、従業員教育等の施策を実行しています。規程・マニュアルなどについては、随時見直し、新たなリスクやテクノロジーに対応するよう努めています。
また、働き方改革の推進などによってリモート環境での業務が増加する傾向にあることを踏まえ、従来のウイルス対策ソフトだけではなく、端末の挙動を監視するエンドポイントセキュリティシステムを導入するなど、ゼロトラストの考え方に沿ったセキュリティ強化に努めています。さらにはセキュリティインシデントに対して、迅速かつ正確に対応するために社内に対応チーム(Computer Security Incident Response Team)を立ちあげて社内外の情報連携を強化するとともに、外部セキュリティオペレーションセンター(SOC)による24時間/365日の監視をしています。しかし、昨今サイバー攻撃はますます高度化しているため、外部からの予期せぬ不正アクセスなどを完全に排除することは困難であり、そのような不測の事態が発生した場合、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
【対応組織】デジタル推進室

9. 金利に係るリスク

当社グループは、営業活動や事業投資などの資金を金融機関からの借入または社債発行などを通じて調達しています。国内外の金利動向を把握し、固定・変動調達比率を調整することなどで金利リスクを管理し、支払利息の低減に努めていますが、金利水準の急上昇などによって当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における支払利息は1,823百万円となりました。
【対応組織】財務経営管理室

10. 品質に係るリスク

当社グループは商社グループですが、合成樹脂コンパウンド、プラスチックフィルム、医薬品原料、水産加工品などの製造・加工会社を国内外に有しています。それらで製造・加工する製品については、信頼性や安全性を確保できるよう品質管理に努めています。また、商社として情報電子、化学品、生活産業、合成樹脂の4つの事業分野において取引先から仕入・販売する多様な原料・商材についても、グローバルに変化するそれら原料・商材に係る環境や安全関連の法規制、規格の動向等を把握して、品質管理に努めています。
しかし、品質問題を完全に回避することは困難であり、当該問題により生じた損失について、当社グループが責任を負う可能性があります。その場合、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
【対応組織】リスク管理室、コンパウンド統括室、各営業本部

11. 保有有価証券の時価下落に係るリスク

当社グループではビジネス戦略上多数の会社の株式等に出資または投資しています。株式市場の動向悪化、または出資先の財政状態の悪化により、保有有価証券の減損リスクがあります。
当連結会計年度末における投資有価証券の計上額は32,840百万円となりました。
【対応組織】財務経営管理室

12. 自然災害等のリスク

当社グループが事業を展開する国や地域において、地震、津波、台風等の自然災害、または感染力の強い感染症が発生した場合には、当社グループの社員・事務所・設備の被害により、当社事業に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの災害による、サプライチェーンの分断や当社グループが取り扱う商材の市場における需給変動等により、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これら災害の悪影響に対しては、当社グループの危機対応の基本方針に基づいた事業継続計画(BCP)を策定し、社員の安全確保を最優先に事業継続を行いますが、すべての被害や悪影響を回避できるとは限らず、将来の当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度においては、中国などアジアを中心に新型コロナウイルス感染症の影響を受けました。
【対応組織】総務広報室

13. 法規制に係るリスク

当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けています。これらの制限を遵守できなかった場合は、コストの増加につながる可能性があります。従いまして、これらの規制は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における海外売上高比率は64%と高く、輸出入規制に大きな影響を受ける可能性があります。そのため、社内に輸出管理委員会を設置し、リスクの軽減に努めています。
【対応組織】リスク管理室、業務推進室

14. 退職給付債務の変動リスク

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されています。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は計上される債務に影響を及ぼします。また、損益面では、当該影響額は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。また、年金資産には退職給付信託として上場有価証券を信託しているため株価の変動の影響を受けやすく、割引率の変動および年金資産運用の結果による損益のブレにより当社グループの年金費用は増減します。株価の下落、割引率の低下や年金資産運用利回りの悪化は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度末における退職給付に係る負債の計上額は1,713百万円となりました。
【対応組織】人事室、財務経営管理室

その他のリスクへの対応

税務コンプライアンス

当社グループの役員および従業員は、コンプライアンス重視の経営を実現するため、国内外問わず法令および社内規範を遵守することに努めています。税務においては各国・地域の関連法令および規定に従った納税を行い、透明性を確保することが、社会的責任の1つであると認識しています。適正な納税は、各国・地域経済の発展に貢献し、ひいては当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上に寄与すると考え、税務リスクの最小化を図るとともに、税務コンプライアンスの維持・向上に努めています。

サステナビリティに関する以下リスクについての対応は、それぞれのページをご参照ください。

危機管理・事業継続計画(BCP)

当社グループでは、地震や風水害等の自然災害、感染力の強い感染症、テロや暴動、犯罪や事故、不祥事やコンプライアンス違反、サイバーアタックやセキュリティインシデントなどの、経営に重大な影響を及ぼす多様な危機への対応を定めた危機管理規程を整備しています。危機が発生した際には、全社対策本部および現地対策本部を設置し、各対策本部長の管理・統括の下、連携して対応する危機管理体制を構築しています。

危機管理規程に基づき、多様な危機が発生した際にも事業継続または早期復旧・再開させるための事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定・導入を2018年から進めてきました。併せて、人命の保護・救助を最優先と位置付けた初動対応マニュアル等も整備しています。
2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、一部拠点の策定を中断していましたが、2021年には新型コロナウイルス感染拡大を通して抽出された課題を整理するとともに、策定済みであった拠点のBCPを見直し、2023年からは中断していた拠点の策定を再開しました。
これらの結果、BCP策定・運用の拠点数は13カ国38拠点となり、国内外の連結グループの主要拠点を網羅することになります。
また、安否・被災状況確認システムの導入および地震・安否確認訓練や消防訓練など、従業員に対する定期的な訓練にも取り組んでいます。