方針・基本的な考え方
アジアを中心とした海外19カ国約60拠点で、4つのセグメントをグローバルに展開する当社グループは、さまざまなリスクにさらされています。これらのリスクは、予測不可能な不確実性を含んでおり、将来の当社グループの業績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、リスク管理を経営の重要課題と認識し、与信管理規程、輸出管理規程、商品管理規程といったリスクに係る諸規程を整備・運用しています。また、国内外のグループ会社に対しては、グループ会社管理規程により、本社からリスクに対する適切な牽制機能を働かせるとともに、商社拠点・製造拠点別の業務ルールを多言語で整備・運用することで、日々の業務から発生するリスクに備えています。
リスク管理体制
全社に関わる多様なリスクついては、発生の未然防止およびリスク対応を図るために、専任組織であるリスク管理室と、社長を委員長としたコンプライアンス委員会を設置し、リスク管理を行っています。同委員会は定期的に年 4 回開催するとともに必要に応じて臨時開催をし、重要な内容については必要に応じて取締役会に報告しています。
重要性の高いリスクとそれらへの対応
以下マトリックスに表示した11のリスクを、当社グループが直面している重要性の高いリスクとして認識しています。マトリックスでは、2022年3月期に実施した「取締役会の実効性評価」における経営者のリスク認識に対する回答、リスク評価分析の結果などを踏まえ、各リスクにおいて想定される業績への影響と発現可能性という観点からマッピングしています。
当社グループの直面している主要なリスク

1. 取引先の信用リスク
当社グループ事業は国内外の多数の取引先に対して信用を供与しています。当社グループにおいては海外取引先も含めたグローバルな与信管理を行っていますが、必ずしも全額の回収が行われる保証はありません。従いまして、取引先の不測の倒産・民事再生手続等により貸倒損失や貸倒引当金の計上を通して、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。2021年度において、当社グループの受取手形および売掛金は1,846億円、棚卸資産の金額は790億円であり、その合計額は総資産の68%を占めています。与信供与については、経営者がメンバーとなる審査会議で審議を行います。棚卸資産については、連結グループ各社の残高推移を月次ベースでモニタリング管理しています。
2. 海外活動に潜在するリスク
当社グループの海外における生産および販売活動は、東南アジアや北東アジア、北米、欧州と多数の地域に及びます。これらの海外市場への事業進出には、予期しない法律または規制の変更、不利な政治または経済要因、人材の採用と確保の難しさ、未整備の技術インフラ、潜在的に不利な税制の影響、その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しています。
2021年度における地域ごとの売上高では、アジア合計が52%であり、最も影響を受ける地域です。2021年度においては、中国などにおける新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの影響などを受けました。なお、感染症流行等の非常時の対策としては、海外の主要な拠点において事業継続計画(BCP)を策定、運用しています。
3. 事業投資に係るリスク
当社グループでは、事業展開をするにあたり、合弁・ジョイントベンチャーなど実際に出資を行い、持分を取得するケースが多々あります。特に連結対象となる関係会社に対する投資については当該グループ会社の財政状態および経営成績の動向により、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。なお当社グループは、商社ビジネス拡大を主たる目的としたマイノリティー投資を基本としており、マジョリティー投資については、リスク・金額を限定しています。NC2023では「将来の成長に向けた投資の積極化」を重点施策として、投資を積極化しています。
4. 商品市場の変動リスク
当社グループが取り扱う、情報電子材料、ケミカル原料、食品、合成樹脂の多くは商品相場の変動に影響を受けます。そのため市況の変動への弾力的な対応ができなかった場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。各営業部門にて、市場の情報を収集して、価格動向を注視するとともに、在庫管理を徹底しています。
2021年度においては、情報電子事業における主要販売製品である液晶関連部材の市場価格および合成樹脂事業における製品価格に影響を与えるナフサ価格の動向の影響などを受けました。また、主に食品ビジネスにおいて、在庫取引を行っており、各商品の市場価格の影響を受ける可能性があります。
5. 事業再構築に係るリスク
当社グループは、事業の選択と集中の推進のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の売却・再編による事業の再構築を継続しています。これらの施策に関連して、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。各国政府の規制や雇用問題等によって、事業再構築の計画が適時に実行できない可能性もあります。また、当社グループが事業再構築の実施により、当初の目的の全部または一部を達成できる保証はありません。なお、撤退検討基準を設けて、該当する当社グループ会社に対しては審査会議において撤退等の審議を行っています。
6. 自然災害等のリスク
当社グループが事業を展開する国や地域において、地震、津波、台風等の自然災害、または感染力の強い感染症が発生した場合には、当社グループの社員・事務所・設備の被害により、当社事業に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの災害による、サプライチェーンの分断や当社グループが取り扱う商材の市場における需給変動等により、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これら災害の悪影響に対しては、当社グループの危機対応の基本方針に基づいた事業継続計画(BCP)を策定し、社員の安全確保を最優先に事業継続を行いますが、すべての被害や悪影響を回避できるとは限らず、将来の当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
2021年度においては、アジアを中心に新型コロナウイルス感染症の影響を受けました。
7. 環境に係るリスク
当社グループは、国内外において4つの事業分野で幅広い商材を取り扱っており、これら商材の製造・販売は当該地域の環境規制やエコ商材への変更等の影響を受ける可能性があります。仕入先の分散化に取り組んでいますが、2021年度においては、化学品原料のビジネスなどにおいて、中国における環境規制の影響を受けました。また、合成樹脂の販売においては、脱プラスチック商材への変更の影響を受ける可能性があります。合成樹脂事業において、樹脂のリサイクル事業や生分解性バイオマス樹脂の製造・販売に取り組んでいます。
8. 為替の変動リスク
当社グループは、海外の事業展開における製品、原材料の生産と販売活動および貿易活動を行っています。原則として為替予約等によるヘッジ取引を行っていますが、外貨建取引等に伴う為替レート変動の影響を受ける可能性があります。また、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
2021年度における為替差益は53百万円となり、為替換算調整勘定は117億円となりました。
9. 法規制に係るリスク
当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けています。これらの制限を遵守できなかった場合は、コストの増加につながる可能性があります。従いまして、これらの規制は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
2021年度における海外売上高比率は65%と高く、輸出入規制に大きな影響を受ける可能性があります。そのため、社内に輸出管理委員会を設置し、リスクの軽減に努めています。
10. 保有有価証券の時価下落に係るリスク
当社グループではビジネス戦略上多数の会社の株式等に出資または投資しています。株式市場の動向悪化、または出資先の財政状態の悪化により、保有有価証券の減損リスクがあります。
2021年度における投資有価証券の計上額は483億円です。
11. 退職給付債務の変動リスク
当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されています。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は計上される債務に影響を及ぼします。また、損益面では、当該影響額は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。また、年金資産には退職給付信託として上場有価証券を信託しているため株価の変動の影響を受けやすく、近年の割引率の低下および年金資産運用の結果による損益のブレにより当社グループの年金費用は増減しております。株価の下落、一層の割引率の低下や年金資産運用利回りの悪化は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
2021年度における退職給付に係る負債の計上額は16億円です。
その他のリスクへの対応
税務コンプライアンス
当社グループの役員および従業員は、コンプライアンス重視の経営を実現するため、国内外問わず法令および社内規範を遵守することに努めています。税務においては各国・地域の関連法令および規定に従った納税を行い、透明性を確保することが、社会的責任の1つであると認識しています。適正な納税は、各国・地域経済の発展に貢献し、ひいては当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上に寄与すると考え、税務リスクの最小化を図るとともに、税務コンプライアンスの維持・向上に努めています。
サステナビリティに関する以下リスクについての対応は、それぞれのページをご参照ください。
危機管理・事業継続計画(BCP)
当社グループでは、地震や風水害等の自然災害、感染力の強い感染症、テロや暴動、犯罪や事故、不祥事やコンプライアンス違反、サイバーアタックやセキュリティインシデントなどの、経営に重大な影響を及ぼす多様な危機への対応を定めた危機管理規程を整備しています。危機が発生した際には、全社対策本部および現地対策本部を設置し、各対策本部長の管理・統括の下、連携して対応する危機管理体制を構築しています。
危機管理規程に基づき、多様な危機が発生した際にも事業継続または早期復旧・再開させるための事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定しています。併せて、人命の保護・救助を最優先と位置付けた初動対応マニュアル等も整備しています。
2018年から国内・海外グループ会社を含む主要拠点におけるBCPの策定・導入を進めており、国内外あわせて13カ国38拠点でのBCP策定・導入を予定しています。
2021年には、新型コロナウイルス感染拡大を通して抽出された課題を整理し、BCPの見直しを行いました。新型コロナウイルス感染拡大で計画策定を延期していた一部の拠点については、2023年度の策定を予定しています。
また、安否・被災状況確認システムの導入および地震・安否確認訓練や消防訓練など、従業員に対する定期的な訓練にも取り組んでいます。