方針・基本的な考え方

稲畑産業グループにとって最大の財産は社員です。多様な背景や強みを持つ社員が、それぞれの能力を最大限に発揮できることが、当社グループの競争力を高め、持続的な成長につながると考えています。そのために、仕事と育児・介護の両立支援などの柔軟で多様な働き方の提供や、適正な労働時間管理による過重労働の予防、福利厚生の充実などの、働きやすい労働条件・環境の整備に努めています。
なお、「サステナビリティ行動指針」および「人権方針」にも掲げているように、事業を行う各国・地域の法令遵守を徹底するとともに、国際労働機関(ILO)「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」を支持・尊重しています。
法定最低賃金を遵守し、同一資格・同一職務レベルにおいてジェンダー間で統一された報酬体系を適用しています。

従業員エンゲージメント

当社グループにとって、国内外の約4,200人の社員は、価値創造の源泉です。経営者と従業員、上司と部下、従業員同士、部署間やグループ会社間のエンゲージメント(=理解、つながり、連携、信頼感)が高ければ、社員はよりイキイキと働くことができます。そして、その高い信頼感を土台とし、社員一人ひとりが自ら組織に参画し、業務に打ち込むことで、結果としてグループ全体の成長につながると考えています。

従業員エンゲージメントサーベイ

2021年度から従業員エンゲージメントサーベイを実施し、経年での変化を確認しています。サーベイで現状の課題を洗い出し、制度創出や改善、組織開発などに活用していくことを大きな目的としています。また、従業員の仕事へのやりがい、組織への満足度などを数値化した結果を所属長にフィードバックし、行動変容の指針として組織の活性化につなげています。

2021年度 2022年度 2023年度
調査対象人数 合計(稲畑産業(株)/海外主要商社拠点) 1,400人
(587/813)
1,697人
(606/1,091)
1,901人
(652/1,249)
回答率 合計 49% 73% 72%
主要項目の肯定的回答率 【エンゲージメント】
今の会社で働いていることに満足している
70% 73% 76%
【上司との関係】
上司と業務上に必要な連携がとれていると思う
75% 80% 80%
【組織文化】
業務を進める上で問題が発生した際、上司や周囲の人は適切なサポートをしてくれている
83% 85% 83%
【企業理念】
会社の理念・ビジョン・経営方針に共感でき、その達成に参加したいと思える
70% 73% 73%
【人事制度・福利厚生】
当社の給与水準は同業他社と比較して、納得できる水準である
59% 55% 57%
【人事制度・研修】
従業員のスキルアップの支援をしていると思う
41% 48% 54%
【ワーク・ライフ・バランス】
残業は自分の無理のない範囲に収まっている
64% 69% 75%
  • *従業員による5段階評価(5.とてもそう思う/4.そう思う/3.可もなく不可もなく/2.そう思わない/1.全くそう思わない)のうち、肯定的な回答である5と4の占める割合

2021年度の調査では「従業員のスキルアップ支援」項目に課題が見えたため、管理職向けを中心とした研修の充実や、社員が自由に選択して自己啓発に生かせる動画学習の支援制度の導入などを行いました。

2022年度の調査では、回答率が前回から大きく改善しました。社内の人間関係や組織文化等に対するエンゲージメントは、引き続き高く推移しました。前回の調査で課題だった研修制度については、一部改善が見られたものの、引き続き取り組みを強化しています。また、前回からスコアが下がった人事制度・福利厚生については、特にスコアが下がった地域について施策を推進しています。

2023年の調査では、回答者数が増加し、回答率も前回から維持できたことから、これまでよりも従業員の意見をより多く吸い上げることができました。主要項目の肯定的回答率も増加傾向にあり、サーベイの結果を元に実施した諸施策(キャリア研修、公募制度、ローテーション等)の成果が出ていると考えています。一方で、昨年より低下した項目もいくつか散見されており、そうした項目については地域・拠点ごとにその傾向と原因を分析し、改善・上昇につなげる施策を各拠点とともに進めていく予定です。

スコアが改善した主な項目と数値
  • 現在の仕事はやりがいがある(3.86→3.91)
  • 上司に異動やキャリアの相談ができている(3.38→3.50)
  • 務時間や仕事の内容で過度な負担を強いないようにしている(3.46→3.62)
スコアが悪化した主な項目と数値
  • 社内の人間関係は良好である(4.17→3.97)
  • 安心して相談しあえる風土がある(3.87→3.71)

多様な働き方(新たな働き方改革)

中期経営計画「NC2023」の主要重点施策に「人的資本活用に向けた取り組みの強化」を掲げ、「新たな働き方改革への取り組みを強化」を提示しています。
当社では、従業員が仕事と生活の調和を図り、より働きやすい雇用環境の整備を行うため、年次有給休暇取得の促進や、長時間労働の改善などに取り組んでいます。
新型コロナウイルス感染症予防対策を契機として、時差通勤や在宅勤務などの制度も積極的に整備を進めてきました。
2022年度からは、オフィス勤務や在宅勤務などのそれぞれの特性を活用し、各人の働き方の自由度や裁量をさらに高めることで、より一層業務の効率化や成果創出を目指して以下の新たな制度を導入しました。

新規に導入した制度(稲畑産業(株))

制度 内容
働き方の自由度や裁量を高めたテレワーク勤務制度 業務効率化や成果創出につなげることを目的に、「在宅勤務」「モバイル勤務」という「テレワーク勤務」が可能。全従業員が対象。
育児や介護、私傷病の治療との両立を支援する在宅勤務制度 【育児目的】
保育環境がある小学校6年までの子を養育する社員で、一時的に子を預けられない場合、および保育環境のない3歳未満の子を養育する社員が対象。
【介護目的】
要介護状態の同居家族を要する社員が対象。
【治療目的】
業務が可能な状態の私傷病者が、治療しながらの就業継続を希望し、主治医ならびに産業医が業務提供可能ならびに在宅での業務遂行を必要と判断している社員が対象。
最適な就業時間帯を選択できる時差出勤制度・昼時差休憩制度 10:00~16:10をコアタイムとし、出勤・退勤時間を30分~1時間(8:00、8:30、9:00、9:30、10:00)変更して所定労働時間の就業を可能とする。また、昼休憩についても、11:00~14:00で1時間取得することができる。全従業員が対象。
有給休暇の利便性が向上する時間単位の年次有給休暇 年次有給休暇のうち、年間2日分を上限に、1時間単位から自由に取得できる。全従業員が対象。
労働時間管理

多様な働き方を推進しつつ、適正な労働時間管理を行うことで、長時間労働の是正・慢性的な過重労働の予防を推進しています。
入退館データのデジタル化や勤怠管理システムを使用した労働時間管理などの施策を実行し、36協定等の法令遵守はもちろんのこと、社員が安心して健康に働ける環境の整備を行っています。

仕事と育児・介護の両立支援

性別に関係なく、すべての社員が育児や介護といったライフステージを迎えた際にも、安心して会社で働き続け、最大限に能力を発揮できるよう、仕事と育児・介護の両立を支援するための諸制度を、法定を上回る水準で整備しています。

育児・介護支援制度一覧

制度名 内容 ポイント
妊娠中の時差通勤 出勤時45分の時間短縮 本人が希望したときは、退勤時のみに特定して認めることがある。
産前休暇 産前6週間の特別休暇
産後休暇 産後8週間の特別休暇
育児休業 子が3歳になるまで 回数の制限なく、分割での取得が可能。最初の5日間は有給扱い。
時間外・休日・深夜勤務の免除 妊娠中および産後1年以内
子の看護休暇 小学校就学の始期に達するまでの子の看護の為に利用可能。1人に対し、1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日取得可能。
介護休暇 要介護状態家族の世話の為に利用可能。1人に対し、1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日取得可能。
介護積立休暇 年度末に失効する年次休暇のうち、5日間までを介護目的で積み立てることができ、最高60日間まで利用可能。

2024年2月7日付で大阪労働局より「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定「くるみん認定」を受けました。
次世代育成支援対策推進法に基づき、担当窓口の設置を含む両立支援サポート体制の構築、男性の育児休業取得率の向上、有給休暇取得率の向上、時間外労働時間の削減などについての行動計画(2023年4月1日~2028年3月31日)を作成し、達成に向けた取り組みを推進していることが認められました。

公平・公正な採用

稲畑産業にとって最大の資産は「人財」であり、「愛」「敬」の精神に共感し、多様なバックグラウンド・スキルを持って当社で活躍のできる社員を獲得すべく、採用活動(新卒およびキャリア)を毎年実施しています。
当社では、能力・人物本位の採用活動を行っており、年齢・性別・国籍等にとらわれない公平・公正な採用活動を基本方針としています。採用データや採用フローをwebサイトで公開しているほか、選考を担当する社員に対して公正な採用選考のためのトレーニングを実施するなどしています。

従業員との関わり

稲畑産業グループは労働組合を設置し、組合員がそれぞれの特性を生かし、安心して仕事に集中できる環境の実現に向け、豊富な福利厚生制度・設備を提供しており、従業員のモチベーション向上にも寄与しています。
また、労働安全をはじめとする労働条件の改善およびその他の経済的地位向上を図ることを目的として、さまざまな課題について労使での協議を定期的に行っています。
2024年3月1日時点での組合員比率は62%です。