方針・基本的な考え方

稲畑産業グループは、これまでも創業者が掲げた「愛」「敬」の精神に基づく、人間尊重の経営を行ってきました。近年、国際的にビジネスにおける人権尊重の重要性が高まっていることを受け、グローバルネットワークを強みとする当社グループもその責任を果たすべく、人間尊重の精神を発展させ、2022年3月に取締役会の決議を経て「稲畑産業グループ 人権方針」を制定しました。

稲畑産業グループ 人権方針

稲畑産業グループは、創業以来の社是ともいえる「愛」「敬」という人間尊重の精神に基づいた経営理念と、サステナビリティ基本方針・行動指針に基づき、「稲畑産業グループ 人権方針」(以下、本方針)を定め、企業活動において影響を受けるステークホルダーの人権を尊重し、自らの事業活動において生じる人権への負の影響に対処することにより、人権尊重を促進する責任を果たしてまいります。

1. 適用範囲

本方針は、稲畑産業グループのすべての役員および従業員(嘱託社員・派遣社員含む)に対し、適用されます。また、ビジネスパートナーやその他関係者にも本方針を支持していただくことを期待するとともに、人権の尊重に努めていただくよう働きかけていきます。

2. 国際規範の支持・尊重と法令遵守

「国連グローバル・コンパクト」が掲げる人権を含む10原則への賛同を表明し、「国際人権章典」や国際労働機関(ILO)「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」、「児童の権利に関する条約」など、人権に関する国際規範を支持・尊重するとともに、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた人権尊重の取り組みを推進していきます。また、事業活動において、関連する国・地域の法令を遵守します。国際的に認められた人権と各国法の間に矛盾がある場合においては、国際的に承認された人権の原則を尊重するための方法を追求します。

3. 推進体制

各部門が連携し、本方針を実現する為の体制を構築するとともに、取締役会および人権啓発委員会が本方針の遵守・実施状況を監督する責任を負います。

4. 重要と考える人権課題

多様性ある社会において持続可能な事業活動を行う企業として、以下の人権課題を重要な項目と認識しています。

  • 人身取引、強制労働、児童労働の禁止
  • 心と身体の健康と安全性の確保
  • 人種、肌の色、国籍、言語、宗教、思想、年齢、性別、性的指向、性自認、障がいの有無、財産、雇用形態等による偏見や差別の禁止
  • あらゆるハラスメント、いじめ、不公平な扱いの禁止
  • 労働者の結社の自由、団体交渉権の尊重
  • 最低賃金の確保と適正な労働時間の管理
  • 個人情報およびプライバシーの保護
5. 人権デューデリジェンス

国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、事業活動が及ぼす人権への負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう努めます。また、人権への負の影響に対する措置について、関連するステークホルダーと誠実に対話と協議を行います。

6. 救済・是正

社内外のステークホルダーが事業活動に関する懸念を通報できる、適切かつ実効性のある苦情処理の仕組みを設け、人権に対する負の影響を引き起こした、あるいはこれを助長したことが明らかになった場合、適切な手続きを通じてその救済・是正に取り組みます。

7. 教育・啓発

本方針が理解され、効果的に実施されるよう、稲畑産業グループのすべての役員・従業員に対し、適切な教育を行い、人権啓発に取組みます。

8. 情報開示

人権尊重の取り組みについて、当社ホームページ、統合報告書等のコミュニケーション手段を通じて報告していきます。

2022年3月制定

稲畑産業グループ 人権方針

体制

「稲畑産業グループ 人権方針」においても明記しているように、各部門が連携し、本方針を実現する為の体制を構築するとともに、取締役会および人権啓発委員会が本方針の遵守・実施状況を監督する責任を負います。

人権デューデリジェンス

当社グループの事業活動によって影響を受ける人々の人権を尊重するために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権デューデリジェンスに取り組んでいます。
当社グループが取り組む人権デューデリジェンスの全体像については、下図の通りです。「自社・グループ会社のDD」「サプライチェーンのDD」「人権DDの土台」の3つのカテゴリーに分類して進めています。
まずは自社・グループ会社の人権リスクを洗い出し、人権尊重の風土醸成に取り組むことが重要だと考えています。最大の財産である従業員の人権を守るとともに、自社の人権意識がグループ内やサプライチェーンにも大きな影響を与えるためです。そこで、当社の従業員を対象に「①人権DDデジタルサーベイ」を実施しました。
また、当社グループは幅広い商材・ソリューションを取り扱っているため、サプライチェーンも国内外に広がっており、さまざまなステークホルダーが関わっています。そのためサプライチェーンのDDについては「②事業におけるリスクの抽出」で上流まで深堀する方法と、「③取引先(新規・既存)対象DD」で影響を行使しやすい直接の取引先を網羅する方法の2種類で取り組んでいます。

①人権DDデジタルサーベイ

SDGパートナーズ有限会社等の外部専門家の協力を得て「人権DDデジタルサーベイ」を2023年6月に実施しました。
このサーベイは、法務省『今企業に求められる、「ビジネスと人権」への対応』の25の人権リスク(下図)を基にした自社内の人権リスク度合いの測定とその原因の1つとなる「心理的安全性」と「無意識の偏見」を量的に計測するものです。今回はサンプリング方式として当社の従業員166名を対象としました。
今後は、回答結果をもとにさまざまな人権リスクの発生傾向や背景を独自の観点から分析し、次に取り組むべき施策を検討していきます。分析結果については、当社グループのサステナビリティサイトで報告する予定です。

②事業におけるリスクの抽出

外部専門家の協力のもと、事業におけるリスクの抽出を行っています。
当社グループの事業を対象に、取り扱い商材のデータや営業本部社員のヒアリングなどをもとに事業の実態を洗い出しました。それらを国際的なガイドラインや指標などに照らし合わせて、“商材×地域”の軸で事業ごとの潜在的な人権リスクを分析しています。
その後、深刻度、発生可能性等の観点からリスクを評価し、今後は現地調査も視野に入れながら、人権DDの取り組みを進めます。
分析結果などの詳細は、適宜当社グループのサステナビリティサイトで報告する予定です。

③取引先(新規・既存)対象DD:スクリーニングシステムの導入

人権リスクのみならず、コンプライアンスや環境・社会面のリスクに対しての取引先(新規・既存)対象DDの一環として、スクリーニングシステムを2023年度から導入しました。
既存・新規の取引先をこのシステムでスクリーニング・モニタリングすることにより、サプライチェーン上のリスクを広くチェックしていく予定です。問題のある取引先については、個別にコミュニケーションをしていくことも検討しています。
また、今後はシステムでのスクリーニング・モニタリングだけではなく、サプライヤーへの直接的なアンケート調査なども検討していきます。

相談窓口

主に各種ハラスメント、評価、人間関係、職場の各種問題などに関する社員相談窓口として「なんでもお悩み相談室」を、主に法令・規則違反、各種不正、重篤な人権侵害や深刻なハラスメントなどに関する社員相談窓口として「コンプライアンスホットライン」を設置しています。
これら2つの相談窓口(内部通報制度)は、雇用形態を問わず、当社グループで 働いているすべての役員および従業員(嘱託社員・派遣社員含む)が利用することができます。また、通報対応業務従事者が通報者を秘匿する義務、通報者を探索することの禁止、通報者及び調査協力者に対する不利益取扱の禁止などを定め、従業員等が不利益を被る危険を懸念することなく安心して情報提供できる制度としています。
社内ポータルサイトにこれらの窓口の案内を掲載したり、研修で案内するなど、社員への周知にも努めています。

当社のコーポレートサイトでは、一般の方やステークホルダーの方からのお問い合わせ窓口を設置しています。皆様からのご意見・ご提案等を、顧客満足度の向上やステークホルダーの理解促進、リスクの未然防止等に活かしています。

人権研修

毎年、全社員(役員・従業員・嘱託社員・派遣社員)を対象とした合同研修会で人権啓発ハラスメント研修を行っています。
また、職場ハラスメント防止のための知識と考え方を理解し、どのような場合にハラスメントになるのかという判断基準を学べるe-learningも整備しています。全社員向け・管理職向けの動画をいつでも見られるポータルサイトに用意し、「見る→理解する→実践する→振り返る」を繰り返して学習できるようにしています。
また、役職者を対象とした、外部講師によるセクシュアル・ハラスメント研修を実施しています。時代の変化や世代間のギャップに伴い、セクシュアル・ハラスメントの感じ方も変わってきている現状や、職場でセクハラ問題が起きないようにするための方法など、部署内でのハラスメント防止や適切な指導を促すための研修内容となっています。

研修動画画面(2020年度からコロナウイルス感染防止のため、動画視聴研修に変更)

世界中の社員を対象に、日本語・英語で発行している社内報「いなほ」で、「ビジネスと人権」についてのコンテンツを掲載しました。事例を含めながら、ビジネス上で配慮すべき人権課題について学べる内容としました。

社内報「いなほ」

外部との協働

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの人権に関する以下のテーマ別分科会に参加しています。

  • ヒューマンライツデューデリジェンス分科会
  • 人権教育分科会
  • サプライチェーン分科会

人権侵害防止のためのデューデリジェンスのベストプラクティスなどを学び、人権尊重への取り組みにつなげています。
また、大阪同和・人権問題企業連絡会に会員企業として、大阪市企業人権推進協議会に幹事企業として、それぞれ参画しています。

2022年10月24・25日、UNDP(国連開発計画)が開催した「ビジネスと人権アカデミー」に参加しました。
日本企業向け人権デュー・ディリジェンス研修として行われた本アカデミーでは、人権に関する国内外の専門家による講義や、参加企業によるグループワークなどが行われました。
今後、当社グループの人権デューデリジェンスの取り組みに反映させていきます。

UNDP|日本の支援を受け、17か国で人権基準を強化し、 責任あるビジネスを推進