
稲畑産業株式会社は、創業以来130年以上にわたり、社会の発展とともに歩んできました。私たちは、「『愛』『敬』の精神に基づき、人を尊重し、社会の発展に貢献する」という経営理念を掲げ、信頼を礎とした人間尊重の経営を続けてまいりました。この理念は、今日の持続可能な社会の実現に向けた取り組みにおいても、私たちの指針となっています。
当社が2021年10月にサステナビリティ委員会を立ち上げ、サステナビリティ経営を本格的にスタートしてから3年が経ちました。気候変動への対応に留まらない、様々なサステナビリティ関連の法規制等への対応を迫られる中で、社会の公器としての企業の責任の重さを改めて実感する3年間でした。そこで2024年5月には、新中期経営計画の策定に合わせ、当社グループ初となる「サステナビリティ中期計画2026」を発表しました。この計画は、気候変動やダイバーシティ、人的資本といった現代の重要課題に対して具体的な目標とアクションを定めたものであり、世界共通の目標であるSDGsとの関連も明記し、私たちのサステナビリティに対する基本的な姿勢が反映されています。
気候変動に対しては、2022年6月に発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」を踏まえ、脱炭素化の取り組みを一層強化してまいります。具体的には、自社排出分のGHG排出量を2022年度比で2026年度までに25%、2030年度までに42%削減し、2050年度までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。また、事業を通じた地球環境への貢献として、環境関連ビジネスの売上高を2026年度までに1,000億円まで伸ばすことも目標としています。
また、商社である当社グループにとって、最大の財産である社員が生き生きと活躍することは、企業成長の面においても非常に重要であり、従業員のwell-being(身体的・精神的・社会的に満足な状態)の向上やダイバーシティ&インクルージョンの推進にも力を入れています。具体的には、従業員エンゲージメントサーベイの「今の会社で働いていることに満足している」「会社の理念・ビジョン・経営方針に共感でき、その達成に参加したいと思える」という項目の肯定的回答率80%以上や、女性管理職比率を2030年までに10%に引き上げることなどを定量目標として掲げ、取り組んでいます。このように多様な人材が活躍できる環境を整えることで、組織全体の創造性と競争力を高めることができると考えています。
サステナビリティにまつわる課題は、経営における長期的なリスクである一方、先んじて適切な対応を行えば大きな機会となります。環境保全、人権の尊重、社員の労働環境への配慮、公正な取引など、解決すべき社会課題に対して積極的に取り組むことで、持続可能で健全な社会の形成に対する企業としての責任を果たすとともに、新たなビジネスチャンスを創出し、企業として成長し続けることを目指します。
2025年は創業から135年の節目の年となります。明治中期に合成染料の輸入販売から事業を起こした当社が、幾多の危機を乗り越えて事業を継続することが出来たのは、数多くの取引先・株主の皆様のご支援の賜物であると同時に、歴代の経営陣や社員が時代の要請に応えて自らを変革することが出来てきたからだと考えています。これからも当社グループ一丸となって、経営理念や価値観といった「変えてはならないもの」を礎としながら、時代の変化を的確に捉え、社会の要請に応え続けることで持続的な発展を遂げてまいります。
2025年2月
稲畑産業株式会社
代表取締役社長執行役員
サステナビリティ委員会委員長