2001年07月05日

お知らせ

稲畑社長記者会見から

稲畑産業株式会社は今年、創業110周年を迎えました。
創業者稲畑勝太郎が当時の先端技術だった合成染料、染色機械、織機などをフランスから輸入することから出発した弊社も次第に化成品、医薬品に進出しました。 現在では合成樹脂、ケミカル、住環境、食品といった事業を展開する一方、情報技術(IT)やエレクトロニクスなどの情報電子事業が新たな柱となっています。海外では11カ国、47ヵ所で事業を展開しておりますが、今後はアジア、北米、欧州を基点とした三極体制が益々鮮明となってくるものと思われます。 経営環境に様々な変化が生じる中、稲畑産業としても従来の発想を変え、新しい考え方やシステムを導入する必要が出て参りました。昨年取りまとめた経営戦略5ヵ年計画の下、事業拡大に加え、財務体質や連結経営の強化には新しい発想をもって取り組み、高収益体質を築いていく所存です。

現在、弊社は3つの基本的課題に取り組んでいます。
第一の課題は有望なテーマを増やして収益性の高い仕事をできるだけ多く生み出すことと、次の時代に適用する機能と特色を明確にすることです。高度成長期は、従来の仕事をどれだけ伸ばせるかが売上計画の主流でした。しかし現在は既存事業を維持拡大すると同時に、新しいテーマや仕事の創出に全力をあげて努力するべき時です。これを促進するためのインセンティブなど、様々な制度や考え方を検討する必要があります。流通コストが見直される中、単なる仲介業的な役割は否定され、企画力や提案力、そして深い知識や情報力が評価されるでしょう。販売力の強さに加え、加工能力、製造能力、国際性などをあわせ持ち、メーカーやユーザーの機能を補完できるような能力を持つことで、商社の存在価値が高まることが期待されます。縮小均衡、といった合理化案もコスト面からは重要ですが、伸びる芽を見つけ、育てることの方に重点を置くべきだと考えます。
今後最も高い成長が期待される情報電子分野では、

1) 半導体液晶関連の製造装置・検査機器などの機械装置、
2) フラットパネルディスプレー(FDP)関連などの電子材料、
3) カラープリンタ用インクなどの機能化学品といった情報メディア関連、
4) 「電子透かし」技術、Linuxコンピュータやインターネット関連など

の新規事業に重点を置いていきます。
スペシャリティ・ケミカル分野では、医薬・農薬中間体、写真感光資材、生活環境関連で、専門知識と綿密な情報収集を基にした企画立案型ビジネスを目指し、調剤薬局や介護事業などのヘルスケア分野にも真剣に取り組んでいきます。 住環境分野では、住宅メーカーへの高気密・高断熱・高耐久材の開発提案を行う一方、原材料からの一貫した供給体制を強化します。またパーティクルボードなどのリサイクル商品に力を入れる考えです。 合成樹脂はエンジニアリングプラスチック事業に重点を置きながら、包装資材のメーカーとしての機能強化と、原料から製品に至るトータルソリューションを提供していきます。 食品関係では、水産・農産・畜産の各分野で輸入品を含め特色のある商品を伸ばしていきたいと考えています。 海外では、アジアで好調な情報電子関連装置・材料の拡販を目指すとともに従来の合成樹脂事業を拡大します。北米ではケミカル事業に加え、IT関連や健康食品関連事業を強化、欧州では新たにロンドンに設置した現地法人を主力拠点に、IT関連やスペシャリティ・ケミカル事業を充実させていきます。

第二の課題は、関連会社の徹底した見直しと強化です。
連結経営の実態が企業評価の重要な要素となる時代を正しく認識し、従来とは異なる発想で選別を図る一方、育成すべきは確固たる構想の下で育成して行く所存です。有望な新規投資は積極的に行います。

第三は、透明性の確保が厳しく要求される今後の会計基準に対応できる体質を築くため、グループ企業を含め企業経営の実態を完全にディスクローズしていくことです。
問題があれば先送りせず速やかに表に出して解決し、悪い芽は臆せずに迅速に摘み取る、という当然のことを実行できる習慣とシステムが必要となります。ROAやROE、キャッシュフロー、資金効率などを重視し、健全な財務会計の構築を図る所存です。

2000年3月期の弊社の売上高は連結ベースで前期比0.7%増の2,678億円となりました。また東南アジア経済の回復を受けたシンガポール、タイ、香港などの連結子会社の損益が改善したことや、国内有力連結子会社の収益増が大きく寄与したことで営業利益は同88.2%増の34億6千万円となりました。経常利益は、営業利益増や持分法投資損益の大幅改善により、同209.7%増の51億6千万円、当期純利益は同276.9%増の30億9千万円となりました。 単体では売上、経常利益とも、おおむね計画を達成することができましたが、将来の健全経営のために必要な引き当てを思い切って行ったため、当期利益が2億円強にまで減少するという異例の決算となりました。 これは会計基準の変更による有価証券の時価評価導入を機に、想定された含み益を顕在化させ、実現した経常利益と合わせた額を原資として、連結経営重視の今後に備え、関連会社の選別と強化を促すために大幅な損失引き当てを実施したものです。また、もう一つの新基準である退職給付会計に対応するため、退職給付債務の未認識部分の一括処理を行い、徹底した財務の健全化を図りました。

7月から経営トップ直轄の組織として、関連事業統括室、海外統括室、IT推進室、PR・IR推進室を設置しました。 関連事業統括室の役割は、連結経営が重視される中、関連会社を直接統括することです。従来、関連会社は各本部の下に位置しておりましたが、独立した経営責任を持たせると同時に、稲畑産業本体の経営トップに直結させることが狙いです。 海外統括室は、連結経営上重要な柱となる海外各社の経営管理と総合的な国際戦略を統括します。 IT推進室は、インターネットが普及しITが飛躍的な進歩を遂げる中で、今後の商社機能のあり方などを検討することが急務となっているため、関連会社や取引先とのネット化の推進、IT関連のソフト技術を含め、弊社が取り組むべき新規テーマの検討、eビジネスの可能性を探ります。 PR・IR推進室は、経営の実態と目標・機能や特色を、株主・取引先そして従業員に正しく伝えることが求められる時代の要請を受け、コミュニケーションに携わる機能を担うべく経営トップ直轄として設置しました。 昨年設置した総合企画室は、PR・IR業務をこのPR・IR推進室に移管した上で、今後は各本部の新規テーマとは別の側面から新規事業の開発を調査、企画していきます。 最後に昨年設立した地球環境室ですが、適切な環境マネジメントシステムの下、今後とも環境への配慮に積極的に取り組んで行きます。

次世代に向けての体制づくりには率直な議論や意見交換が必要です。この2ヵ月間、社員全員と直接会い、現場の生の声に接することができました。起業家精神や業績連動方の報酬のあり方など、今後の重要な課題に関しても、弊社は、人間尊重の精神、そしてできるだけ多くの人が新しい価値観を共有することを基本に新たな可能性を探っていきたいと考えています。

本件に関するお問い合わせは下記へ
■ 稲畑産業株式会社 PR・IR推進室
E-mail:info@inabata.co.jp
(大阪)TEL:06-6267-6087
(東京)TEL:03-3639-6544


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