稲畑産業株式会社 社内報「いなほ」212号
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異なります。また入社年次が同じである“同期”の意識が強いことにも驚きました。この同期の関係が、部署間を超えた情報交換や協力を促進しているのだと思います。さらに部署を超えた異動も行われていますので、より会社全体に広がるチームワークが育成されているのだと思います。フランスでは採用方法が異なることもあり、同期という考え方はなく、いったん配属されるとその部署内でのプロフェッショナルを目指します。部署間の情報交換もマネージャー同士が主に行います。ですので、組織全体の一体感を作り出すことは容易ではないかもしれません。││日本企業では当たり前と思っていることでも、こんなにたくさん違いがあったのですね。ところでこれらの違いから、日本企業の強さが生まれるヒントは見つかりましたか。もちろん、ありました。まず個人より会社を優先する意識は、会社のために何ができヨタ生産方式」を生み出した企業文化について、多くの関心が寄せられていますが、同時にその一部を模倣しようとしても機能しないという実情があります。その謎を解明するために、私は日本人の仕事に対する価値観に注目をしました。││実際に稲畑で働き始めてどのように感じられましたか。稲畑で働き始めて驚いたことがいくつかあります。最初に驚いたのは、自己紹介をするときに、「稲畑産業の○○です。」のように自分の名前よりも先に会社名を名乗ることです。フランスや中国では、まず自分の名前、その後職種、最後に会社名を名乗り、会社よりも個人を優先します。││確かに、日本では所属企業や学校を優先していますね。それだけ所属する団体への帰属意識が高いのかもしれません。次に驚いたことは、新卒採用の採用基準です。採用で最も重視することは、その学生が今まで何を学んできたかというキャリアよりも、稲畑産業の社風に合うかであり、それを複数の社員から見て評価することです。中国やフランスではあり得ないことです。これは本当に驚きました。フランスでは、出身大学や今までのキャリアが採用基準で重要視されるので、その出身大学によっては新卒のお給料も昨年7月に稲畑にインターン生として来られたヤンさんに、中国、フランス、日本に住まわれて気づいた文化や価値観の違いについて教えていただきました。││ヤンさんは特に仕事に対する価値観の違いに注目されているそうですが、何がきっかけだったのでしょうか。フランスでは日本の戦後の経済発展についての研究が盛んに行われています。特に「トるかを考える基礎になります。また新入社員のときから、会社の社風、つまりその会社がもつ価値観を共有できる人物を採用しているので、自然とチームワークが円滑になり、信頼感が生まれやすくなります。それに加えて同期のつながりや部署間の異動によって、部署を超えたコミュニケーションが活発になります。社員一人一人が会社のためを考え、部署を超えたチームワークを発揮して、会社レベルの提案を行うとき、「トヨタ生産方式」に代表される会社レベルでの品質管理体制や、社員同士が人材を育成する企業文化が作られるのではないかと思います。││そのような独特な企業文化が、結果的に日本企業の強みをつくった可能性があるのですね。稲畑で行われている部署を超えた異動や、稲畑の価値観をグローバルレベルで共有することは、その強みを作る重要な要素ともいえますね。本日は興味深いお話をありがとうございました。「トヨタ生産方式」を生んだ日本の企業文化に触れて12中国の満州(遼寧)生まれ、南京育ち。15歳から渡仏し、2014年9月よりリヨン経営大学で経営学を専攻。リヨン経営大学Yang Dongchenヤン・ドンシェン

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